防災訓練のアイデア10選|自治体の「参加したくなる」ユニークな事例

9月1日は「防災の日」、8月30日から9月5日は「防災週間」です。
1923年9月1日に発生した関東大震災と、台風被害の多い時期であることにちなんで1960年に制定されて以来、全国の自治体でこの時期に防災訓練が行われてきました。
しかし今、多くの自治体が同じ悩みを抱えています。
「毎年やっているのに、参加者がいつも同じ顔ぶれ」
「若い世代の参加率が低い」
一方で全国には、ゲーム、料理、宿泊、デジタル技術を取り入れて、思わず参加したくなる防災訓練を実現している自治体があります。
この記事では、実際に行われているユニークな取り組み10個の事例を紹介します。
防災訓練の参加率は、なぜ伸びないのか
内閣府「防災に関する世論調査」によると、防災訓練に参加した経験のある人は2022年調査の43.6%から2025年調査では40.4%へと小幅に低下しました。
「参加も見学もしたことがない」
「訓練が行われていることを知らなかった」
を合わせると52.9%と、半数を超えています。
年代差も顕著です。
NTTドコモ モバイル社会研究所の2024年調査では、地域の防災訓練への参加経験は70代が42%に対し、30代は20%と約2倍の開きがありました。
注目すべきは「参加しない理由」です。
2025年の内閣府調査で最も多かったのは、
「具体的な日時・場所、申込方法が分からない」(38.7%)
「関心や興味がなかった」(17.1%)
を大きく上回りました。つまり、住民の防災意識が低いのではなく、従来型の告知方法や参加形式が、住民の生活に合っていない可能性が高いのです。
大阪府豊中市の2025年市民調査でも、訓練未経験者の77%が「訓練への参加は必要だと思う」と回答しています。必要だと分かっているのに、参加のきっかけがない。
このギャップを埋めようとするユニークな事例をご紹介します。
ゲーム感覚で参加できる防災訓練のアイデア事例10選
防災訓練のアイデア①:北海道札幌市「ぼうさいアドベンチャーランド」
札幌市「ぼうさいアドベンチャーランド」
厳冬期の地震を想定した総合防災訓練と、家族向け防災イベントを同じ会場で同時開催。
段ボールベッドや非常食の避難所体験に加え、VR・AR、ドローン操縦、教育版マインクラフト、eスポーツまで揃えました。
来場者は5,651人、参加者アンケートでは87%が「総合防災訓練は初参加」。
新しい層に届いた数字がはっきり出た事例です。

防災訓練のアイデア②:愛知県東浦町「天下分け目の防災合戦」
愛知県東浦町「天下分け目の防災合戦」
「火事だー大声合戦」「急げ!火消し隊」「バケツリレー」。
初期消火や情報伝達の訓練要素を、地域対抗の競技として再構成した防災運動会です。
勝敗がつくからこそ盛り上がり、住民同士が声を掛け合う関係づくりにもつながっています。

防災訓練のアイデア③:岡山県岡山市南区「防災博士の挑戦状」
岡山市南区「防災博士の挑戦状」
会場に隠されたヒントカードを探し、実物の防災用品とダミーの中から在宅避難に必要な物を選ぶ謎解きゲーム。
1回5〜10人・約30分で実施でき、町内会や子ども会が「借りて実施できる」貸出教材になっている点が秀逸です。
大規模イベントを打てない地域でも再現できます。

防災訓練のアイデア④:神奈川県川崎市「備えるフェスタ」
川崎市「備えるフェスタ in 新百合ヶ丘」
駅周辺を使ったシールラリー、巨大防災かるた、減災迷路、移動型謎解き。
テーマは「いつもの暮らしを防災に」。
買い物や外出の延長で防災体験を回遊できる設計で、自衛隊カレー500食が来場のきっかけをつくりました。

実際の避難生活を「体験」する防災訓練
防災訓練のアイデア⑤:大阪府泉大津市「乳幼児・妊産婦 避難所お泊まり体験会」
大阪府泉大津市「乳幼児・妊産婦 避難所お泊り体験会」
市内ホテルを福祉避難所として使い、妊産婦や乳幼児連れの家族が実際に一晩宿泊。
液体ミルク、ドライ入浴、ポリ袋調理、乳幼児の心肺蘇生などを体験します。
過去の体験会で「乳幼児を寝かせる場所が足りない」ことが分かり、市は備蓄品にベビーベッドを追加。
訓練の気づきが実際の備蓄改善につながりました。

防災訓練のアイデア⑥:宮崎県「避難所宿泊体験イベント」
宮崎県「避難所宿泊体験イベント」
電気・水道を制限した指定避難所で一晩を過ごすイベント。暗さ、寒暖、音、トイレ、プライバシー。宿泊しなければ分からない課題を、5歳から74歳までの参加者が体感しました。

防災訓練のアイデア⑦:愛知県「ペット同行避難対策モデル事業」
愛知県「ペット同行避難対策モデル事業」
県内10市町で、コンテナハウス方式・屋外テント方式など3つのモデルに分けてペット同行避難を検証。
単発の体験会で終わらせず、受付から動線まで避難所運営の課題を自治体ごとに洗い出しています。
下記、イメージは名古屋市で実施された「ペット同行避難訓練」の様子(2025年1月)。

食とテクノロジーを使った防災イベント
防災訓練のアイデア⑧:兵庫県神戸市「食べとう?KOBE防災レシピコンテスト」
神戸市「食べとう?KOBE防災レシピコンテスト」
家庭の備蓄食品を使った防災レシピを募集し、58件の応募から「神戸そばめし」など11作品を表彰。
「非常食は我慢して食べるもの」という常識を、「日常的においしく食べられるもの」へ転換する試みです。

防災訓練のアイデア⑨:宮城県「みやぎ津波避難シュミレーター」
宮城県「みやぎ津波避難シミュレーター」
キャラクターを操作し、津波発生時の出来事に対応しながら避難するブラウザゲーム。
インストール不要でスマホからすぐ遊べて、会場に来られない住民にも訓練機会を届けられます。

地域の多様な住民を巻き込む防災訓練
防災訓練のアイデア⑩:東京都「外国人のための防災体験ツアー」
東京都「外国人のための防災体験ツアー」
英語・中国語・韓国語・ミャンマー語のグループに通訳が同行し、地震・消火・応急救護を体験。
日本語の説明が壁になりやすい外国人住民に、言語別の少人数体験で参加の入口を開いています。

事例から見えた、参加したくなる訓練の共通点
10の事例を整理すると、4つの共通点が浮かび上がります。
- 防災以外の参加動機がある:ゲーム、料理、ペット、子育て、デジタル体験。「防災に強い関心がなくても来る理由」を用意している
- 対象者が具体的:乳幼児家庭、外国人住民、マンション住民など、その人固有の困りごとから設計している
- 見学ではなく、判断と行動を求める:選ぶ、組み立てる、料理する、競う。参加者自身が手と体を動かす
- 成果を次の改善につなげる:初参加率を測る、見つかった課題を備蓄に反映する

国の方針もこの流れを後押ししています。
内閣府の2026年防災週間実施要綱には、
「体験的要素やゲーム的要素を取り入れた行事」
「デジタル技術を使った実践的な訓練」
が明記され、日常と災害時を分けない「フェーズフリー」の考え方は国の検討会のテーマになりました。
ただし、留意点もあります。
防災ゲームを扱った2022年の研究では、ゲーム体験で「楽しさ」や「興味」は有意に高まりました。
一方、防災への「理解」は自動的には深まらないことが示されました。
楽しさは目的ではなく、これまで訓練に来なかった人が最初の一歩を踏み出すための「入口」。
体験後の振り返りや、日常の行動につなげる設計までが、ひとつの訓練です。
全国1,741の市区町村が「防災日本一」を競う取り組み事例
そして2026年、この「楽しみながら防災」の流れをさらに一歩進めた取り組みが始まっています。
全国1,741すべての市区町村を対象にした「ピクトレ防災チャンピオンシップ2026」です。

参加方法はシンプルで、スマートフォンの無料アプリで、街を歩いて消火栓や避難場所標識、防災倉庫といった身近な防災設備を見つけて撮影・投稿するだけ。
集まった投稿は人口1,000人あたりの得点として自治体ごとに集計され、「日本一、防災が進んでいる街」を決める全国ランキングになります。
人口で割る方式のため、大都市も小さな村も同じ土俵で競えるのが特徴です。
散歩のついでに1枚投稿するだけで、自分の街のランキングに貢献できる。
防災設備の場所が自然と頭に入る。まさに「防災以外の参加動機」「判断と行動」「日常の延長」という、本記事で見てきた共通点を全国規模で実装した仕組みです。
毎週日曜21時にはYouTubeで公式ライブ配信が行われ、その週の全国ランキングやユニークな防災の取り組みが紹介されています。
自治体・企業・学校向けには、自組織の防災訓練活動をピクトレの仕組みで記録・見える化できる「団体参加パッケージ」も用意されており、2026年は無償で提供されています。
ピクトレを使えば、防災訓練や地域点検を、参加者が楽しめる体験型イベントに。社員・生徒・住民の活動を組織ごとに集計・可視化し、BCP訓練・防災教育・地域活動の実施記録として残せます。

- 公式サイト:https://bousai.pictree.jp/
- 団体参加パッケージのお申し込み:https://forms.gle/VfdBSiU1yAvLo68t8
まとめ
防災訓練の目的は、訓練らしいことを繰り返すことではなく、災害時に必要な判断や行動を、より多くの住民が一度でも経験することにあります。
ゲームも、料理も、宿泊も、ランキングも、それ自体が目的ではありません。
防災に関心のなかった人が最初の一歩を踏み出す入口です。
この防災週間、あなたの街の防災訓練に、そしてあなたの街の「防災日本一への道」に、一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。