30年来の盟友が辿り着いた、AI時代に「熱量」を灯す経営の本質

ー 佐藤 有美(経済界 会長)× 吉田 直人(DEA 代表取締役会長)

DEA吉田と経済界佐藤有美氏

Profile

経済界会長 佐藤有美氏

佐藤 有美
1960年東京生まれ。父・佐藤正忠氏の衆議院選出馬のため4年間を秋田県で過ごした後、1969年に杉並区へ移住。結婚、出産、育児、離婚を経て、父が創業した株式会社経済界に編集記者として入社。2001年10月に代表取締役社長に就任後、10年目の節目となる2011年に若い起業家を支援する「金の卵発掘プロジェクト(現・経済界Golden Pitch)」を始動。2025年3月のZUUグループとの資本提携を経て、代表取締役会長に就任。


シンガポール発の課題解決ゲーム企業、株式会社 Digital Entertainment Asset(DEA)は、「人々が楽しみながら社会課題に参加し、その行動や貢献が価値として循環する仕組み」の実現に取り組んでいます。

これまで、暗号資産「DEAPcoin(ディープコイン)」を基軸とした市民参加型社会貢献ゲーム「PicTrée(ピクトレ)」をはじめ、ゲーム要素を取り入れた社会課題解決型の経済圏を構築してきました。

このたび、「DEAラボ」の新コーナーとして、代表取締役会長 吉田直人と世の中を牽引するリーダーによる対談シリーズを開始。激変する社会・産業・経営の最前線を駆け抜けるゲストと共に、次代を生き抜くためのヒントをお届けします。

記念すべき第1回のゲストには、吉田と長きにわたって親交のある、雑誌『経済界』会長の佐藤 有美氏をお迎えしました。

30年前の新宿での摩訶不思議な出会い

吉田直人(以下、吉田):
有美さんとは、かれこれ30年近くの付き合いになりますよね。ご縁をいただいたのは、新宿にある「ちゃんこ屋さん」でした。その店の親方が、当時僕が経営していたザッパラスに出資してくれた縁で、よく飲みに行っていたんです。

雑誌『経済界』 代表取締役会長 佐藤 有美氏(以下、佐藤氏):
私はそのお店で、若い頃にアルバイトをしており、遊びに行った時、親方から「面白い人がいるよ」と、”ごろうさん”(吉田の愛称)を紹介されたのが始まりでした。

当時は私も主婦で、子供を寝かしつけてからお店に顔を出していました。一方、ごろうさんは、iモード関連の事業を手掛けるスタートアップ経営者。「若いのに、いろいろやっていてすごいな」というのが第一印象です。

当時は、親方が出資していることも知らず、「気の合う飲み友達ができた!」くらいの感覚で(笑)。ごろうさんが話す「占いが100円で売れて、多くの人が買ってくれるんだ」という話は、当時の私には摩訶不思議な、聞いたことのない世界でした。「この人がやってることは、きっとすごいことなんだろうな」と、どこか直感的に感じていたのです。

吉田:
僕はいつも、新しい事業を始める時は「まだ誰もやっていないコトやモノ」に目を向けます。今の事業のWeb3やブロックチェーンもそうですが……。半歩先ではなく、3歩も4歩、もしかしたら5歩も先に進みすぎてしまうんですよね(笑)。

佐藤氏:
当時の私にとっての経営者像は、父(『経済界』創業者、佐藤正忠)でした。父はオーラやパワーが強く、困難に直面しても力で突き進むタイプ。だからこそ、ごろうさんの「ちゃんと仕組みを作り、一般の人に喜んでもらいながら収益を上げる」というスマートな手法は、本当に衝撃的でした。

吉田:
逆に僕からすれば、有美さんの周りには銀行の頭取やインフラ企業のトップなど、名だたる経営者ばかり。僕はずっとスタートアップのベンチャーでしたから、「なんで有美さんは、僕のような人間を面白がって遊んでくれるのだろう?」と不思議でした。当時から有美さんの人脈は、本当に計り知れないものがありましたから。

DEA吉田直人と経済界佐藤有美氏

「もう後には引けない」ー二人が異業種からトップへ上り詰めた理由

吉田:
有美さんも、いわば異業種からの転身ですね。記者から父上の後を継がれて社長になったのは、どういった経緯だったのでしょうか?

佐藤氏:
私の場合は家業でしたから、正直なところ「父の一存」でした。父から「社長をやれ」と言われた時は、本当に嫌でした(笑)。でも、子供の頃から父の背中を見てきたせいか、見えない何かに、あるいは誰かにドンッと背中を押されたような感覚があって、思わず「はい」と答えてしまったんです……。

実はその頃、このままこの仕事を続けていいのかと悩んでいて。小さな編集プロダクションでも作れば、子供とふたり食べて行けるだろうと、会社を辞める覚悟を決めていた時期でもあったのです。

吉田:
そうだったんですね。退職を考えていたのに、なぜ正反対の「継承」を選ばれたのですか?

佐藤氏:
ふと、「会社経営は、自分一人だけでなく社員とその家族の人生を背負っているんだ」という事実に気が付いたのです。もし会社が無くなれば、社員は路頭に迷ってしまう。その責任感が、私を突き動かしました。

ただ、当時はまだ経営の意味をわかっておらず、周りに助けられながら現場を見ていくうちに「ああ、とんでもないことを引き受けてしまったんだ」と後から実感したわけです。

気が付いた時にはもう後の祭りで(笑)。無責任な事はできない、その一心でここまで走りつづけてきた感じですね。

ごろうさんは、どうでしたか?

吉田:
僕はとにかく好奇心が強くて、常に新しい祭りを自分で作りたいタイプなんです。だから会社をいくつも作ったり、未知の業種にチャレンジしたりすること自体は、全く苦になりません。逆に、新しいことでないと、心が動かない。

例えば、まだ誰も注目していない、誰も取り組んでいない業界にあえて飛び込んで行く。そのプロセスが楽しくて、すでに出来上がった業種をなぞったり、少し改良することには、あまり面白味を感じないんですよね。

DEA吉田直人

手法は違えど、キラリと光る「恩返し」

吉田:
『経済界』は、若い経営者の応援なども精力的にされていますね。

佐藤氏:
弊社の仕事は「雑誌」と「異業種交流会」の二本柱です。さらに、優れた経営手腕を発揮した経営者を顕彰する「経済界大賞」と国内のスタートアップ・ベンチャー企業を表彰する「経済界GoldenPitch」というアワードがあります。DEAさんは、今年の「経済界 GoldenPitch2025」で見事に審査員特別賞を受賞されましたね。

「経済界大賞」は先代が1975年に始め、「経済界GoldenPitch」は2011年から行っていますが、大きな勇気づけになっていると自負しています。特に「経済界大賞」を受賞されるような重鎮の方々は、限られた任期の中で「社長だからやって当然」と思われがちです。だからこそ、改めて表彰される事を非常に喜んでくださる方が多いのです。それを部下の方々と共に語り継ぎ、喜ばれている姿を見るのは、私にとっても非常に嬉しい事ですね。

ベンチャーの方々に関しても、自分のビジネスを認めてもらえることが経営の後押しになっているという手ごたえがあります。当社は高度成長期から続く会社ですから、突拍子もない斬新なことは難しいかもしれませんが、頑張りを称え合える環境を作ることは何より大事だと思っています。

実は、私が社長になった時は誰も褒めてくれませんでした(笑)。だからこそ、会社のトップの方々に、頑張りを認められる「悦び」を味わってもらいたいという強い願いがあるんです。

ごろうさんのビジネスには、いつも根底に社会貢献的な要素がありますよね?

吉田:
意識しているわけではないのですが、最終的に気が付くといつもそうなっていますね。おそらく事業を作り上げる時に、頭の片隅に無意識にあるのだと思います。新たな取り組みが、少しでも世の中の人の役に立つという形になると、パチッとはまる感じがして面白い。

自分に余裕があるわけではないのですが、事業を通じてそれができたら「一石二鳥」どころか「一石三鳥」です。そのベースにあるからこそ、市民参加型社会貢献ゲーム『PicTrée(ピクトレ)』も生まれました。最初から「社会貢献」を前面に出しすぎても、うまく行かない気がするのです。

佐藤氏:
ごろうさんは「これをやったら多くの人たちが喜ぶ。ここで楽しんでもらえる!」と、ご自分も楽しみながら仕組みづくりをされていて、結果につながっていますね。

経済界会長 佐藤有美氏

AI時代に「熱量」を灯す 遊びと使命が交差する場所

吉田:
話は変わりますが、最近、変化のスピードがあまりに速すぎませんか?

特にIT 業界では、「AIの進化が早すぎて、人間よりAIの方が良いものを作ってしまうのではないか」という強い危惧があります。

佐藤氏:
雑誌の編集も同じです。AIに「この音源を何文字で、ここをポイントにまとめて」と指示すれば、表面上は綺麗に整ったものが出来上がります。

ただ、私たちプロから見ると、どこか機械的で「熱量」や「魂」が感じられない。今、ネット上にそんな記事があふれていますが、いずれそれさえも改善されていくのでしょう。だからこそ、「人は何のために生きているのか」という本質が問われますね。

吉田:
人にはそれぞれ役割がある。では、AIが台頭した後に何が価値になるのか。僕は、「遊びで世の中の課題を解決する」という領域は、最後まで残るのではないかと思っています。

最近、竹中工務店さんと一緒に、オフィスでの交流を自然に生む仕組み作りの実証実験を始めました。会社を一つの「遊び場」と捉えて、ドラゴンクエストのようにご褒美でメダルがもらえたりする。大きい組織だと部署をまたいだ交流は限られますが、仕事をしながら「遊び心」を持つことで、新たなつながりが生まれるのです。

佐藤氏:
リゲインのCMが、かつての「24時間戦えますか?」から「24時間楽しめますか?」に変わりましたからね。家よりも長い時間を過ごす会社に楽しみがなければ、人生は味気ないものになってしまいます。

吉田:
月曜日の朝、少し心が沈んでいる時に、ちょっとした「面白いこと」があるだけでモチベーションは変わります。

DEAはこれまで本社をシンガポールに置いていましたが、今年の1月に日本に本社を移転しました。日本は高度成長期に作られたインフラの老朽化が進んでいますが、僕たちのエンターテインメントの力が行政や地方の役に立てることは、まだまだ沢山あるはずです。

今後も「三方良し」の精神で、社会に信頼されるゲーム企業として邁進していきます。

佐藤氏:
日本に活力を与える、本当に素晴らしい挑戦ですね。応援しています。

吉田:
ありがとうございます。有美さんには、これからもぜひ色々とご指導いただきたいです!
本日は、貴重なお時間をいただきありがとうございました。

DEA吉田直人と経済界佐藤有美氏